2020.2.17-21 白峰三山縦走

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4年間の冬山活動の集大成として厳冬期白峰三山縦走を計画しました。雪の状態が悪く北岳には登れませんでしたが、間ノ岳・農鳥岳を縦走し無事に下山することができたので記録に残したいと思います。

メンバー

L有川(4年)、SL西本(5年)、関野(4年)、三代川(2年)

行動記録

2/17
11:30 出発
13:00 鷲ノ住山
14:30 あるき沢橋

電車の遅れの影響で、夜叉神峠登山口を予定より1時間遅れて出発する。
まずは長いトンネルを2本抜けて鷲ノ住山登山口まで林道を歩く。鷲ノ住山の下りから吊橋を渡り林道に上がるところまでの区間が、所々滑落に気をつける必要があった。あるき沢橋手前にあるスペースで幕営。水は幕営地の100mくらい手前で汲めた。ただ、幕営地は上から落石がありそうな場所だった。


林道から白峰三山を望む

2/18
6:05 出発
9:00 池山
10:50 城峰
11:50 2610m幕営

取り付きから急な登りで50m程上がると尾根が広くなる。赤布を探しながら夏道を登っていく。積雪は数センチしかない。標高1550mくらいから登山道が凍結していたためアイゼンを装着する。池山の先から積雪が増えるがトレースは残っている。城峰周辺にはいくつも幕営適地あり。標高2610m地点まで進んで幕営。

2/19
6:05 出発
7:10 ボーコン沢の頭
8:00 八本歯の頭
9:00 八本歯のコル
14:00 主稜線
18:00 北岳山荘

高気圧に覆われて快晴無風。
八本歯の頭までは傾斜の緩い雪稜歩きだが、途中固く凍った斜面もある。八本歯の頭からは慎重にクライムダウンし、懸垂下降1回でコルまで下りる。梯子は出ていた。


北岳バットレス


懸垂でコルに下りる

コルから吊尾根分岐を目指して急斜面を登っていくが、上部に行くほど斜面が固く凍っていてアイゼンの前爪しか刺さらなくなってくる。
滑落すると致命的なので、分岐へのトラバースの手前でブッシュを掘り出して支点を作りロープを出す。吊尾根分岐にトラバースするか吊尾根を直登するか迷ったが、トラバースは支点が作れないように見えたため直登することにする。

1p目、有川リード。
急なクラスト斜面を30m上がってブッシュを掘り出してビレイ。固く凍った雪面からブッシュを掘り起こすのに時間がかかる。
2p目、西本リード。
岩稜を右から巻いてクラストした急斜面を登る。ブッシュとピナクルから支点を取り、50mロープいっぱいになるまで登る。240cmスリングを大きなピナクルにかけてビレイポイントとした。このピッチは難しかった。
3p目、有川リード。
岩稜を登ったあと雪面を左にトラバースする。ロープを50m伸ばして、ピナクルにスリングをかけてビレイした。ロープの長さが少し足らず、セルフビレイを取ってから一度自分のロープを解き、ロープを延長したため時間をロスした。ここも難しかった。


1ピッチ目


2ピッチ目


3ピッチ目

ロープを束ねて稜線に上がりそのまま山頂に向かっていたが、この先の斜面も雪の状態が悪そうに見える。一度休憩を取って先に進むか考え直す。リミット時刻は1時間過ぎ、残りの行程でもロープを出すことを考えると山頂を諦めて北岳山荘に向かうしかなかった。
北岳山荘への下りも悪い。途中のトラバースで2ピッチロープを出し、北岳山荘に着いたのは日没と同時だった。山荘から北岳まで往復するだけで半日以上かかることが分かったので、山頂はあきらめて縦走を成功させることを優先し、明日は間ノ岳へ向かうことにする。
冬期小屋は快適で窓からは街の夜景が見えた。

2/20
6:25 出発
7:00 中白根山
8:45 間ノ岳
10:45 農鳥小屋
13:00 西農鳥岳
14:35 農鳥岳
15:35 大門沢下降点
18:20 大門沢小屋

昨日よりも風は強いが、視界は良好。
間ノ岳までは登りやすいところを慎重にルーファイしながらも順調に進んだ。山頂からの下りはガチガチのアイスバーン。2948mのコルまで下るまでに100mくらいクライムダウンを強いられる。アイゼンの前爪を強く蹴り込みながら下りていくので脹脛が疲れる。滑落したら数百メートル落ちてしまう場所で緊張した。


凍った急斜面でのクライムダウンからコルまでトラバース

そこからは広く平坦なところを歩いていく。農鳥小屋は雪でほぼ埋まっていた。
西農鳥岳を目指して急傾斜の雪面を登っていく。核心部は西本リードで夏道のトラバースではなく岩稜を直登する。ロープが絡まり時間をロスしてしまった。1ヶ所岩を乗り越えるところが難しいだけで他は難しくない。1ピッチロープを伸ばすと緩い稜線に上がれる。支点はハーケンとピナクルで作った。
西農鳥岳からの下りも雪の状態が悪い。50mくらいピッグと前爪を刺しながらトラバースした。トラバースの動きに慣れてきていたのでロープは出さなかったが、滑落は致命的で精神的に疲れる。     
農鳥岳まではゆっくり登って14時35分登頂。全員でピーク写真を撮ったが自撮りが下手すぎたので載せられない。

山頂からはペンキマークを辿りながら夏道通りに下る。大門沢下降点に向かう途中で雪面を一人ずつトラバースして隣の尾根に移る。それまで稜線上は細いクラックが所々走っていたが、雪面をトラバースしても雪崩れそうな気配はなかった。
大門沢は尾根筋を狙って下降する。クラストした斜面に10cmくらい新雪が積もっていた。下部でトレースと合流し、大門沢小屋を目指す。途中の渡渉ポイントが危なかった。最後はヘッデンで18:20大門沢小屋に到着。水場もトイレもあった。

2/21
7:10 出発
10:20 奈良田発電所

渡渉とトラバースに気をつけるだけで他は問題ない。標高1515mの峠から雪が消えた。長い林道を歩き終えて奈良田に下山することができた。

振り返り
・樹林帯は雪が少なく天気予報も良好だったので、最初は楽勝かなと思っていた。先週暖かかったため稜線上の雪が緩み、週末の冬型で一気に凍ったか。雪のつき方も悪く難易度は上がっていたと思う。
・アイゼンの研ぎが甘く、氷にしっかりと刺すことができなかったのが最大の反省点。
・リーダーとして進退判断をしっかり行えたことで事故なく下山することができた。また、メンバー全員が意見を出し合う中でベストだと思う選択をしていくことができた。
・上越や八ヶ岳で多くのバリエーションルートを経験していたおかげで、雪の状態が悪くても山行を成功させることができた。ロープワークと支点作成の技術はまだまだ改善できる。
・たくさん登り込んで1日中行動してもバテない体力をつけておいたことが良かった。

最後に
僕たちが自分たちの力で冬山に登れるようになったのは、何度も山行をともにしてくださったOBの先輩方のおかげです。今回の山行にあたっても、たくさんのお言葉をかけてくださりありがとうございました。本当に感謝しています。