OB2年目の桝尾です。
8月の3連休に現役二人と北鎌尾根に行ってきました。
【メンバー】
L桝尾(OB)、三代川(4年)、佐藤(4年)
【行程】
8/7(土)
高瀬ダム(6:00)→(8:30)湯俣(9:00)→(13:00)北鎌尾根取付(13:30)→P2(15:00)→P3(15:40)→P4手前幕営地(19:30)
信濃大町駅からタクシーで高瀬ダムに向かう。
高瀬ダムは黒部ダムに次ぐ日本2番目の大きさのダムらしい、かなり迫力があった。
高瀬ダムからしばらくは舗装された平坦な林道歩き、1時間ほど歩くと登山口と広めな駐車スペースがあった。
途中にゲートも無いし、ここまでタクシー入れたのでは?と思ったが、何故か高瀬ダムまでしか入れないようだ。
登山口からも平坦な長い登山道が続き、温泉成分で濁った沢を横切り、硫黄臭が強くなってくると湯俣に着く。
湯俣から高瀬川は、湯俣川と水俣川に分かれる。
北鎌尾根へは手前の水俣川を遡行するのだが、湯俣川を少し行くと噴湯丘と呼ばれる温泉が湧いてる場所があるので見物してみた。
(手前を左手に流れるのが水俣川、奥が湯俣川)
(温泉成分で黒ずんだ川の水)
温泉が湧きだしてるあたりは熱すぎて到底入れないが、少し離れると川の水で冷まされてちょうどいい湯加減になっていそうだ。
試しに入ってみたが、地面からポツポツ湧き出す湯が熱すぎて悶絶。
寄り道もそこそこに出合に戻り、水俣川の遡行を開始した。
湯俣から入山する場合、この水俣川の遡行をなるべく荷物を増やさずにこなす必要がある。
迷った結果、僕と三代川は裸足にクロックス、佐藤はラバー沢靴で遡行することにした。
(佐藤はこの後も沢靴のまま3日間歩き通した)
結果としてクロックスでも歩行自体は問題なかったが、水が冷たすぎて渡渉の度に絶叫する羽目になった。
多少の荷物にはなるが、ネオプレンの靴下を持っていくのが正解だったようだ。
(悪いヘツリにはロープが張ってあった)
(ゴーロの沢だが、渓相はかなり良い)
深くても股下程度の渡渉のため、転びさえしなければ装備が濡れる心配はない。
2時間ほど遡行すると北鎌尾根の末端部が見えてきて、やがて千天出合に着く。
(北鎌尾根の末端が見えると出合は近い)
北鎌尾根の取付は、千天出合から天上沢を少し進み、3つほど登れない滝を高巻きした先にある。
昔は吊り橋があったらしく、大岩に切れ落ちたワイヤーが垂れていて目印になっている。
ここからは槍ヶ岳山荘まで水場は無いので、2日分の水分として一人5ℓずつ汲んだ。
取付からP2までは、かなりの急登だが踏み跡はしっかりしていて迷う心配はない。
順調に高度を上げていき、取付から1時間ほどでP2、その後30分ほどでP3に到着した。
(P2山頂、この先P3まではしっかりした踏み跡があった)
幕営予定地のP4まではあと少しと、楽勝ムードが漂っていたが、ここから遂に北鎌尾根が本性を現してくる。
P3直後からいきなりハイマツの藪漕ぎが始まる、固い枝に阻まれて中々前に進まないし、松脂が不快。
ハイマツの区間を越えたと思ったら、傾斜のきつい岩場が続く。
スタンスは豊富なのでロープを出すか迷うところだったが、クライミング経験の浅いメンバーがいることを考えて念のため3ピッチほどロープを出した。
P3の通過から3時間ほど経ったが、いつまでたってもP4にたどり着かない。
ついに太陽が沈んでルーファイが厳しくなってしまったため、この日はP4手前の小さなスペースで幕営した。
明日も早いので、さっさと飯を食べ、佐藤の流したアイマスメドレーを聴きながら就寝した。
8/8(日)
C1(5:10)→P4(5:30)→(10:00)北鎌のコル(10:30)→(15:50)P11(16:10)→P14(18:00)→P15(18:50)→北鎌平(19:30)
今日中に槍ヶ岳を越えるつもりのため、明るくなるとともに出発。
昨日いつまでたどり着かなかったP4は20分ほど藪を漕ぐと到着した。
(初日の幕営地、手前のピークがP4、奥に見えるのがP8)
(P4直後にある当初の幕営予定地、手前の岩峰がP5とP6、雲に隠れているのがP8)
P5前衛峰を右から巻いたのち、P5はピークの左側をトラバースして巻く、なんとなく踏み跡があるので迷う事はない。
トラバース後、P5-P6間のコルに上がるルンゼが北鎌尾根の核心になる。ここで2ピッチロープを出した。
1ピッチ目はザレの斜面、2ピッチ目は草付き、どちらも支点が乏しく傾斜も急なため結構怖い。
(ルンゼ下部のザレ場)
(ルンゼ上部の草付き)
コルを越えるとP6を右にトラバースするが、ここもザレていて悪く、ロープを出して通過した。
(P6トラバースのザレ斜面)
P7までは特に難しいところはない、P7からの下りも懸垂支点があったが、簡単にクライムダウンできた。
C1から北鎌のコルまですでに5時間、想定よりもだいぶ時間が掛かってしまった。
北鎌のコルで、北鎌沢右俣と合流する。
無雪期の北鎌尾根は、水俣乗越や大天井岳方面から天上沢に下降して、北鎌沢右俣から北鎌尾根に入るのが一般的となっている。
実際、北鎌のコルからいきなり道が明瞭になった。
北鎌のコルから独標手前までは難しいところは無い。
ぐんぐんと高度を上げたのち、ついに岩稜帯に入る。
P8、P9はどれだかよく分からなかった。
(独標トラバース前の広場)
独標へはまず右側を大きくトラバースする。
トラバースは高度感のあるザレの斜面になっていて、スタンスは豊富だが落ちたら確実に助からない。
ここの通過でロープを出している記録はあまり見なかったが、僕らはビビッて3ピッチほど出してしまった。
(「コの字」と呼ばれるところ)
「コの字」を過ぎると独標の取り付きだが、かなり時間が押しているため独標は巻くことにした。
独標-P11間のコルへの登りは、いまいち取り付きがよく分からなかったので適当なところを1ピッチ登る。
コルからわずかに登り返せばP11、ここでようやくガスの合間から槍の穂先が見えた。
ここまで来てガスで何も見えなかったら悲惨だったので、少しだけ安心した。
P11からP14までは基本的には稜線上を進むが、たまに行き詰まるのでその時は基本的に稜線の右側を巻くこととなる。
ルーファイに気を遣うため、ガスるとかなり厳しそう。
(P14までは基本的に稜線通しを進む)
(稜線通しで行き詰まる場合、千丈沢側を巻けば何とかなる)
(手前がP13、奥がP12)
P14の白ザレのピークを越えると、ルーファイ難度はかなり下がる。
序盤は明瞭な巻きで岩峰を巻いて、後半は稜線通しを快適に進むとやがてP15に着く。
(P15手前で記念写真、右奥が独標)
(槍ヶ岳はすぐそこ)
P15から懸垂下降したところでついに日没になってしまった。
最後は気を付けながらヘッデンで15分ほど進むと、幕営適地の北鎌平に到着。
もともと今日中に槍ヶ岳を越えるつもりだったので、飯を作れるほどの水は残っていない。
行動食を少しだけ食べ、そそくさと就寝した。
佐藤はこの日もアイマスメドレーを流していた。
8/9(月)
C2(4:40)→槍ヶ岳(6:30)→(7:00)槍ヶ岳山荘(7:45)→(11:20)横尾(12:00)→上高地(14:20)
4時起床。
今日は早い時間から天気が荒れるようなので、なるべく早くに出発したい。
行動食を食べながら空が白むのを待ち、5時前には出発した。
大槍の基部までは、基本稜線上を進む。
P15から見るとかなり急そうだったが、明らかに傾斜が緩やかなところがあり、以外と簡単。
(基部への登り)
大槍の基部からは山頂へは下部と上部の2カ所のチムニーを越える必要がある。
下部チムニーは手前にレリーフがあるらしいが、どうしてもレリーフが見つからなかったので、適当なところを登る。
特に難しいところは無く、簡単に越えられた。
上部チムニーは序盤がハング気味で、さらに雨で岩が滑るのでかなり怖い。
メンバーで一番登攀力のある三代川にリードを任せて1ピッチ登るといきなり槍の山頂に飛び出した。
(上部チムニーの登り)
(1ピッチでちょうど山頂に着く)
3日かけてようやく着いた槍ヶ岳だが、山頂は風が強かったので記念写真だけ撮ってすぐに退散した。
槍ヶ岳山荘に着く頃には、ついに雨が本降りとなった。
ここからの下山も長いので、山荘でココアを飲みながらゆっくり休憩。
小屋ノートはコロナの影響で止めてしまっているらしく残念だった。
休憩中に外が騒がしかったが、ちょうどTJARが悪天で中止になったらしい。
いつまで経っても雨が弱まりそうにないので、諦めて下山開始。
連日の長時間行程の疲労+昨夜と今朝はロクな飯を食べられていないため、何でもない道でしょっちゅう躓く。
ついに横尾で限界を迎えて、小屋の食堂に駆け込んだ。
2日ぶりに食べたまともな飯は、旨すぎて感動してしまった。
(豚スタミナ丼、プライスレス)
豚スタミナ丼で英気を養い、最後の力を振り絞って横尾から上高地までの平坦な長い道のりを黙々と歩く。
途中からついに土砂降りの雨になってきた。
ザックカバーを忘れたせいで、水を吸ったザックがどんどん重くなっていく。ザックカバーは偉大だった。
こんな天気でも上高地に近づくと観光客が増えてくる。
14:20上高地着、バス停に着いた瞬間全員座り込んで放心状態になってしまった。
本当にお疲れ様でした。
【振り返り】
・末端から北鎌のコルまでは藪漕ぎと悪い登りが続きかなりしんどい、ぶっちゃけ二度と行きたくない。やはり無雪期は北鎌沢からの取付がおすすめ。
・ハーケンは持ってきたが残置ハーケンが豊富で使うところは無かった。ハンマーはP5-P6間の草付きの通過で重宝した。
・渡渉はネオプレンソックス+クロックスが良さそう、ラバー沢靴で最後まで歩き通すという手もあるが、今回そうした佐藤は足裏の皮が盛大に剥けて痛そうだった。
・どれだけロープを出すかによってCTがかなり変わってくる、バリエーションに自信のないメンバーと行く場合、記録にあるCTに対してかなり余裕を持たせる必要がある。