日程:2020/10/20-21
ルート:谷川岳一ノ倉沢中央奥壁本庄山の会ルート
メンバー:西本、有川
約1年前の山行なので詳細な記録は覚えていないが、今でも記憶に残っている場面だけ書こうと思う。
まず、中央奥壁とは2ルンゼと3ルンゼの間にある急峻な壁のことで、本庄山の会ルートはほぼ草付きで構成されたこの壁の弱点を突きながら国境稜線に抜ける。当初3ルンゼを登る予定だったが、最初のF滝を登った後に左上して中央奥壁に取り付いてしまった。3ルンゼに戻るかパートナーと相談したが、弱点を探せば登れそうな気がしてこのまま中央奥壁を登ることにした。
1ピッチ目は登りやすそうな凹状部に入るため、左に大きくトラバースした。2ピッチ目はその凹状部をクラックに支点を取りながら直上した。このピッチには朽ちたハーケンがあった。そして、3ピッチ目が急峻な草泥壁のクライミングで緊張した。草を束ねてスリングで支点を取り、草の根元を抑え込みながらスタンスが壊れないようにそっと足をのせていく。意外とこういうセルフコントロールが要求されるクライミングが好きで楽しかった。ビレイ点は細いけどしっかりとした枝1本で構築するしかなかった。
その後も草付主体の悪いピッチが続いた。朝は雨が降っていて出発が遅れたこともあり、5ピッチ目くらいで真っ暗になってしまった。それでも気温は快適で満点の星空が広がっており、日が変わる前には登りきるぞーくらいの気持ちで登攀を続けた。ちょうどオリオン座流星群の時期だったらしく、ビレイ点では流れ星を眺めていた。
支点がほぼないため登るペースが上がらないものの、ゆっくりと確実に進んでいた。だが、上部で高さ15mくらいの被った岩壁に突き当たる。順番にトライするも核心部は支点が取れず、抜けられなかった。それでも必ず登れるところがあるはずと思い、岩に沿ってトラバースして登れそうなところを見つけた。緩めの傾斜の硬い岩を登り、上部はフェースクライミング。これもすごく楽しかった。おそらく3ルンゼの上部にあるⅣ級のフェースだと思う。ここを登り切ったくらいのところでガスってきて気温が下がったので、岩陰でツエルトをかぶって休憩することにした。結局夜中の3時まで登り続けた。3時間ほど眠ると朝日が出てきて体が温まり、クライミングを再開した。最後は藪漕ぎで稜線に抜けた。
稜線でバイト先のモンベルに電話して、出勤できないことを謝った。社員の方によると、一ノ倉沢でビバークしたと聞いて驚いたが、僕の声がとても晴れ晴れとしていたらしい。
アドレナリンが出ていたのかあまり疲れてはおらず、パートナーより先に西黒尾根を下りて一ノ倉沢出合いのテントを回収した。さすがに帰りの運転はあまりの眠気で意識が飛びそうになり、SAで仮眠を挟んで帰京した。貴重な経験の代償として、タイムズカーシェアに延滞料金を5万払い、会員証は剥奪された。
最近は、ボルダリングやスポート、クラックのクライミングが非常に楽しく、山にあまり行けていない。でも、自分が本当に一番好きなのは、山の大きな壁でのクライミングだと思っている。また体を鍛えて山を登りに行きたいと思う。